②-6給与はなぜ「成果」ではなく「時間」で決まるのか

会社員の武器・防具「構造の理解」

給与は何に対して支払われているのか

会社員として働いていると、給与について考える場面がある。
「もっと給料が上がってもいいのではないか」
「成果を出しているのに、あまり反映されていない」
「仕事ができる人と、そうでない人の差が小さい」
「結局、頑張ってもあまり変わらないのではないか」
こう感じることは自然だ。
実際、仕事量が多い人はいる。
責任が重い人もいる。
周囲より成果を出している人もいる。
会社に大きく貢献している人もいる。
それでも、給与が思ったほど変わらないことは多い。
ここで一度、考えてみる必要がある。
そもそも、会社員の給与は何に対して支払われているのか。
成果なのか。
頑張りなのか。
利益なのか。
役割なのか。
会社にいた時間なのか。
この問いを持たないまま働いていると、給与への不満はかなり大きくなる。
なぜなら、給与の根拠を知らないまま、感覚だけで「報われていない」と感じることになるからだ。

「成果を出したから増える」は分かりやすいが危うい

給与は成果で決まる。
この考え方は分かりやすい。
成果を出した人が多くもらう。
成果を出していない人は少なくなる。
一見すると、とても公平に見える。
実際、成果は給与に関係する。
評価にも関係する。
賞与にも関係する。
昇給にも関係する。
昇格にも関係する。
次の配置にも関係する。
だから、成果が大事であることは間違いない。
ただし、ここで注意が必要だ。

会社員の給与は、成果そのものへの報酬ではない。
成果は影響する。
しかし、給与の土台そのものではない。
ここを間違えると、給与の見え方がかなり苦しくなる。
「成果を出したのに、なぜすぐ給料が上がらないのか」
「会社に貢献しているのに、なぜ報われないのか」
「利益を出していない人と、なぜ大きな差がつかないのか」
こうした不満が積み上がる。
しかし、会社員は、個人事業主のように成果物を売っているわけではない。
経営者のように、事業リスクを丸ごと背負っているわけでもない。
会社員は、会社の指揮命令のもとで働く労働者だ。
この立場を外すと、給与の構造が見えなくなる。

会社員は成果物を売っているわけではない

会社員は、会社に何を提供しているのか。
営業成績。
資料作成。
改善提案。
顧客対応。
事務処理。
現場対応。
トラブル処理。
これらはすべて仕事の成果だ。
しかし、給与の根本にあるのは、成果物の売買ではない。
会社員が会社に提供しているのは、労務だ。
もっと言えば、会社と結んだ契約に基づいて、会社の指揮命令のもとで働くことだ。
そして、その労務提供は、労働時間と結びついている。
何時間働いたのか。
所定労働時間はどれだけか。
残業は何時間か。
休日に働いたのか。
深夜に働いたのか。
給与を考えるとき、ここが土台になる。
つまり、会社員の給与を理解するうえで、まず見るべきものは成果ではない。
労務提供だ。
そして、その労務提供を測る中心にあるのが、労働時間だ。

だから残業代は成果ではなく時間で発生する

残業代を見ると、この構造は分かりやすい。
残業代は、成果を出したから支払われるものではない。
長く働いたから支払われる。
もっと正確に言えば、決められた時間を超えて労務を提供したから支払われる。
売上が増えたかどうか。
利益が出たかどうか。
上司が満足したかどうか。
良い資料ができたかどうか。
そこが直接の基準ではない。
基準は、時間だ。
決められた労働時間を超えて働いたかどうか。
休日に働いたかどうか。
深夜に働いたかどうか。
ここで判断される。
これは、会社員の給与が労働時間と強く結びついていることを示している。
残業代は、「頑張ったご褒美」ではない。
会社に追加で時間を差し出したことへの対価だ。
この見方を持つと、給与に対する理解はかなり変わる。

会社員は、経営者ではなく労働者である

会社員はよく、こう言われる。
「経営者目線を持て」
「自分の給与の何倍も利益を出せ」
「会社に貢献しろ」
「利益を意識して働け」
これらは、仕事をするうえで大事な考え方だ。
会社が利益を出さなければ、給与も雇用も守れない。
自分の仕事が会社の数字につながっている感覚も必要だ。
ただし、自分の立場を見失ってはいけない。
会社員は、経営者ではない。
会社員は、労働者だ。
会社の指揮命令のもとで働き、労務を提供し、その対価として給与を受け取っている。
ここを間違えると、必要以上に自分を追い込む。
会社の利益が足りない責任を、自分一人で背負う。
成果が給与に直結しないことを、自分の価値不足だと受け止める。
長時間働くことを、当然の貢献だと思い込む。
給与以上の責任を、自分に課し続ける。
もちろん、会社に貢献することは大切だ。
ただし、会社員は事業リスクを丸ごと背負っている存在ではない。
まずは労働者として、労務を提供し、その対価として給与を受け取っている。
この前提を忘れない方がいい。

成果はどこに反映されるのか

成果は無意味ではない。
むしろ重要だ。
ただし、成果は給与の土台というより、制度の中で反映される材料として扱われる。
評価。
賞与。
昇給。
昇格。
配置。
役割変更。
こうしたところに影響する。
だから、成果を出す意味がないわけではない。
ただ、成果が毎月の給与にそのまま直接反映されるとは限らない。
会社には制度がある。
等級がある。
評価期間がある。
昇給原資がある。
人件費予算がある。
他の社員とのバランスがある。
その中で処遇が決まる。
ここを理解すると、給与への不満は少し整理しやすくなる。
「成果を出したのに、なぜすぐ給料が上がらないのか」
ではなく、
「自分の成果は、どの制度に反映されるのか」
と見られるようになる。
月給なのか。
賞与なのか。
昇給なのか。
昇格なのか。
次の配置なのか。
ここを分けて考えることが重要だ。

現実的な着地

会社員の給与は、成果そのものへの報酬ではない。
土台にあるのは、労務提供だ。
会社の指揮命令のもとで働く。
決められた時間、労務を提供する。
その対価として給与を受け取る。
だから、給与を理解するには、労働時間を理解する必要がある。
何時間働いているのか。
どこから残業なのか。
休日に働くとはどういうことか。
深夜労働はどう扱われるのか。
勤怠がなぜ重要なのか。
ここに関心を持つことが、給与を理解する入口になる。
成果は大事だ。
ただし、成果だけで給与を見ない方がいい。
給与は、労働時間、契約、評価、等級、人件費の中で決まる。
この構造を理解すると、給与への不満を感情だけで抱え込まずに済む。
会社員は、経営者ではない。
まず、労働者だ。
この立場を理解することが、自分を守る出発点になる。

次に見るのは「契約」という視点

次回は、会社員という立場を、契約という視点から整理する。
会社員は、会社に人生を預けているわけではない。
会社と契約し、労働力を提供している存在だ。
この視点を持つと、会社との距離感が変わる。
会社に期待しすぎない。
会社を敵視しすぎない。
自分が何を提供し、何を受け取っているのかを見る。
そこから、会社員という立場をもう少し冷静に捉えられるようになる。

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