「知識を身につけろ」と言われ続ける
会社員として働いていると、何度も同じような言葉を聞く。
「知識を身につけろ」
「スキルがないと通用しない」
「市場価値を高めろ」
「勉強し続けないと取り残される」
こうした言葉そのものは、間違っていない。
仕事をするうえで知識は必要だ。
スキルもあった方がいい。
学び続けることにも意味はある。
ただし、問題は別のところにある。
多くの場合、知識やスキルという言葉の意味が曖昧なまま使われている。
何を知っていればいいのか。
何ができればスキルがあると言えるのか。
どこまで分かっていれば十分なのか。
何を知らないと危険なのか。
この基準がはっきりしない。
それなのに、「知識が必要だ」「スキルを身につけろ」と言われ続ける。
これでは不安になる方が自然だ。
会社員が不安になるのは、向上心が足りないからではない。
努力していないからでもない。
何を目指せばいいのかが、見えにくいからだ。
会社が見ているのは、知識量ではない
会社は、知識をまったく見ていないわけではない。
ただし、多くの場合、会社が見ているのは知識量そのものではない。
どれだけ暗記しているか。
どれだけ専門用語を知っているか。
どれだけ詳しく説明できるか。
それだけで評価しているわけではない。
会社が現実的に見ているのは、仕事の中で使えるかどうかだ。
この人に任せて大丈夫か。
大きなミスを起こさず進められるか。
分からないことを放置しないか。
必要なときに確認できるか。
関係者に説明できるか。
問題が起きたときに、止めずに動けるか。
ここが見られている。
もっと言えば、会社は「完璧に分かっている人」だけを求めているわけではない。
現実の仕事では、すべてを完璧に理解してから動ける場面は少ない。
分からないことは出てくる。
想定外のことも起きる。
判断に迷う場面もある。
そのときに、調べる。
確認する。
相談する。
整理する。
致命傷にならないように進める。
こうした動きができるかどうかが重要になる。
会社員にとって必要なのは、すべてを知っていることではない。
分からない場面で、壊さずに扱えることだ。
「分かってから使う」は、なかなか来ない
多くの人は、知識やスキルについて、次の順番を想像している。
勉強する。
理解する。
自信を持つ。
実務で使う。
この順番は、きれいに見える。
ただ、現実の仕事では、あまりこの順番では進まない。
実際には、先に場面が来る。
急に担当になる。
急に説明を求められる。
急にトラブルが起きる。
急に資料を作る必要が出る。
そこで初めて調べる。
分からないところを確認する。
必要な部分だけ理解する。
一度やってみる。
次に似た場面が来たとき、前より少し動ける。
この繰り返しで、知識やスキルは定着していく。
つまり、最初から完璧に分かっている必要はない。
むしろ、「完全に理解してから使おう」と考えるほど、動き出せなくなる。
知識やスキルは、机の上で完成させるものではない。
実際の場面で使いながら、少しずつ形になるものだ。
知識・スキルは、自分を証明するものではない
知識やスキルを、自分の価値を証明するものとして考えすぎると苦しくなる。
資格を持っていないから、自分には価値がない。
専門知識がないから、自分は通用しない。
分かりやすい技術がないから、自分は弱い。
こう考えると、知識やスキルは不安の材料になる。
しかし、本来、知識やスキルは自分を証明するためのものではない。
仕事の場面を扱うための道具だ。
分からないことを調べる。
相手に説明する。
トラブルを避ける。
判断を間違えないようにする。
自分を守る。
会社の中で動きやすくする。
そのために使うものだ。
だから、知識やスキルは、完璧でなくていい。
必要な場面で使えればいい。
危ないところを避けられればいい。
知らないと不利になる部分に気づければいい。
そのくらいの位置づけで考えた方が、会社員には現実的だ。
現実的な着地
知識やスキルという言葉に、不安を感じすぎる必要はない。
大事なのは、何でもできる人になることではない。
知っていることと、使えることを分ける。
どこまで知らなくても大丈夫かを知る。
どこから知らないと危険かを知る。
分からないときに調べる場所を知る。
必要なときに相談できる相手を持つ。
これだけでも、会社員としての不安はかなり減る。
「スキルがない」と感じたときは、すぐに自分を否定しなくていい。
まず、何が分からないのかを分ける。
知識が足りないのか。
経験が足りないのか。
使う場面がないだけなのか。
言葉にできていないだけなのか。
ここを分けるだけで、不安は少し扱いやすくなる。
次に見るのは「休み」という仕組み
次回は、「休み」を取り上げる。
有給休暇。
休日。
欠勤。
振替休日。
代休。
どれも身近な言葉だが、正確に説明できる人は意外と少ない。
休みは、感覚で決まっているものではない。
契約や制度で決まっているものだ。
そして、この「休み」というテーマは、会社が感情ではなく、構造で動いていることを理解するための題材として非常に分かりやすい。
このシリーズでやりたいのは、制度を暗記させることではない。
身近なテーマを通して、
「会社はどういう仕組みで動いているのか」
を少しずつ理解していくことだ。
知識やスキルは、不安を増やすためのものではない。
自分の立場を理解し、余計な消耗を減らすための道具だ。


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