朝、会社に行く理由が浮かばない。
辞めたいわけではない。
大きな不満があるわけでもない。
ただ、頑張れない。
評価されない気がする。
何のためにやっているのか分からない。
以前ならできていたことに、気持ちが向かない。
仕事を続けてはいるが、自分の中の火が消えたような感覚がある。
こういう状態になることがある。
このとき、多くの人は自分を責める。
やる気がない。
甘えている。
怠けている。
社会人として未熟だ。
もっと気合いを入れなければいけない。
しかし、仕事のモチベーションが下がることを、すぐ人格の問題にしない方がよい。
モチベーション低下は、単なる怠けではない。
評価、目標、負荷、人間関係、説明不足、生活、健康、家族。そうしたものとのズレとして起きることがある。
だから、やる気が出ないときに最初にやるべきことは、無理に気合いを入れることではない。
何がズレているのかを整理することである。
モチベーションは制度外の変数である
会社員として働く以上、会社と社員の関係は、基本的には雇用契約で成り立っている。
会社が社員に求めているのは、まず労務提供である。
決められた時間に働く。
担当業務を行う。
指揮命令に従う。
会社のルールの中で職務を遂行する。
会社は、その対価として給与を支払う。
もちろん、会社は社員に前向きに働いてほしいと考える。主体性、挑戦、成長意欲、チーム貢献も求める。
しかし、会社が直接買っているのは、モチベーションそのものではない。
会社が基本的に買っているのは、労務提供である。
ここを分けて考える必要がある。
モチベーションが高いことは望ましい。仕事の質も上がりやすい。周囲との関係もよくなりやすい。成長にもつながりやすい。
しかし、モチベーションが常に高い状態でなければ会社員として失格、というわけではない。
給与は、基本的には気分の高さに対して払われているわけではない。
決められた労働時間と職務遂行に対して払われている。
だから、モチベーションが下がったときに、「自分には価値がない」とまで考える必要はない。
まずは、契約上求められている仕事を確認する。
何を最低限やる必要があるのか。
どこまでが自分の担当なのか。
どこからが追加的な期待なのか。
何をやれば、会社員としての義務は果たしていると言えるのか。
ここを確認すると、少し冷静になれる。
モチベーションが下がっているときほど、気持ちではなく契約と役割に戻る。
原因を一つに決めつけない
やる気が出ないとき、人は原因を一つに決めつけがちである。
上司が悪い。
会社が悪い。
評価が悪い。
自分が弱い。
仕事が向いていない。
そう考えたくなる。
しかし、モチベーション低下の原因は、一つとは限らない。
むしろ、複数の要因が重なっていることの方が多い。
大きく分けると、次の4つがある。
評価・目標のズレ。
負荷・責任の過多。
人間関係・説明不足。
生活・健康・家族。
評価・目標のズレ
一つ目は、評価や目標とのズレである。
頑張っているつもりなのに評価されない。
目標が現場実態と合っていない。
何をすれば評価されるのか分からない。
成果よりも印象で見られている気がする。
会社が求める方向と、自分が大事にしたいことが違う。
こうしたズレがあると、やる気は下がる。
努力しても報われないと感じるからだ。
ただし、ここで重要なのは、評価を人格の問題にしないことである。
評価は、自分という人間そのものを測っているわけではない。
会社が求める役割や成果との接続を見ている。
だから、評価に納得できないときは、「自分はダメだ」と考える前に、何が評価基準とズレているのかを見る必要がある。
負荷・責任の過多
二つ目は、負荷や責任の過多である。
仕事量が多すぎる。
責任だけ重くなっている。
人が足りない。
相談できる相手がいない。
期限に追われ続けている。
ミスできない仕事ばかり抱えている。
この状態が続くと、モチベーション以前にエネルギーが切れる。
本人のやる気が足りないのではない。
負荷が大きすぎるだけのことがある。
特に中堅社員は、周囲から頼られやすい。
若手のフォローをし、上司の意図をくみ、他部署と調整し、現場の不満も受ける。気づけば、正式な役割以上のものを抱えていることがある。
この場合、必要なのは気合いではない。
業務範囲の線引きである。
人間関係・説明不足
三つ目は、人間関係や説明不足である。
上司の考えが分からない。
異動や評価の理由が納得できない。
部署間で責任を押しつけ合っている。
自分だけが損をしている気がする。
会社の方針が現場に説明されない。
この状態では、仕事そのものよりも、納得できなさで消耗する。
人は、多少大変な仕事でも、意味が分かれば踏ん張れることがある。
しかし、意味が分からないまま負荷だけ増えると、気持ちは切れやすい。
説明不足は、単に言葉が足りないというだけではない。
会社側の抽象と、労働者側の具体がズレることで起きる。
会社は方針や制度の言葉で語る。
本人は生活や現場実務の言葉で受け止める。
このズレが埋まらないと、納得感は生まれにくい。
生活・健康・家族
四つ目は、生活、健康、家族の問題である。
睡眠が足りない。
体調が悪い。
家庭の負担が増えている。
子育てや介護が重なっている。
通勤や単身赴任で生活が崩れている。
家計や将来への不安がある。
こうした問題があると、仕事への意欲は当然下がる。
仕事のモチベーションは、仕事だけで決まるわけではない。
生活の土台が崩れれば、仕事に向けるエネルギーも減る。
それを「やる気がない」と片づけるのは粗い。
モチベーション低下は、複合的に見る必要がある。
打開できるものと、できないものを分ける
原因が見えてきたら、次にやるべきことは、打開できるものと、打開しにくいものを分けることである。
すべてを自分で変えようとすると、さらに消耗する。
打開しやすいものもあれば、個人では変えにくいものもある。
打開しやすいものには、次のようなものがある。
目標の再定義。
業務範囲の線引き。
上司との期待調整。
相談。
情報整理。
たとえば、目標が曖昧なら、上司と確認する。
何を優先すべきか。
何を捨ててよいのか。
どの成果を求められているのか。
評価上、どこが重要なのか。
業務範囲が広がりすぎているなら、線を引く。
自分が持つ業務。
他部署に返す業務。
上司に判断してもらう業務。
期限を調整すべき業務。
やらないと決める業務。
こうした整理は、自分の動き方である程度変えられる。
一方で、打開しにくいものもある。
組織文化。
経営判断。
制度設計。
上司の価値観。
会社全体の人員不足。
評価制度そのもの。
これらを一社員が短期間で変えるのは難しい。
もちろん、声を上げることに意味がないわけではない。改善提案や相談をすることはできる。
しかし、自分一人で変えられるものとして抱え込むと、消耗する。
大切なのは、変えられるものと、変えにくいものを分けることだ。
変えられるものは小さく動かす。
変えにくいものは、距離を取るか、時間を置くか、別の選択肢を持つ。
打開できない間は、最低エネルギー運転に切り替える
モチベーションが下がっているときに、すぐ打開できるとは限らない。
評価制度はすぐ変わらない。
上司の価値観もすぐ変わらない。
組織文化もすぐ変わらない。
人員不足もすぐ解消しない。
異動や配置がすぐ戻るとは限らない。
このようなときに、気合いで全力運転を続けると、自分が壊れる。
だから、打開できない間は、最低エネルギー運転に切り替える。
最低エネルギー運転とは、投げ出すことではない。
契約上の義務は果たす。
必要な仕事はする。
報告、連絡、相談は怠らない。
期限や品質を最低限守る。
周囲に迷惑をかけない範囲で働く。
ただし、追加の自己犠牲はしない。
必要以上に抱え込まない。
頼まれていない仕事まで背負わない。
評価に直結しない過剰な作り込みをしない。
休日や夜の時間まで無制限に差し出さない。
会社の問題を自分一人の問題として背負わない。
モチベーションが下がっているときに必要なのは、燃え上がることではない。
下げ止めることである。
自分を壊さないことである。
回復を会社の中だけに置かないことも重要である。
仕事で評価されないなら、家庭、学習、副業、運動、読書、人間関係など、会社外にも回復の場所を持つ。
会社の中で火が消えているときに、会社の中だけで火をつけ直そうとすると苦しくなる。
環境変化を待つこともある。
上司が変わる。
部署が変わる。
仕事の山が過ぎる。
制度が変わる。
人員が補充される。
自分の生活が落ち着く。
すぐに打開できないことでも、時間で状況が変わることはある。
その間に必要なのは、全力で走り続けることではない。
壊れずに残ることである。
打開できたら、小さく戻す
状況が少し良くなったときも、いきなり全力に戻さない方がよい。
モチベーションが下がったあとに、急に以前と同じ熱量で働こうとすると、また反動が来る。
だから、小さく戻す。
一つだけ前向きに動いてみる。
一つだけ改善提案を出してみる。
一つだけ上司と期待値を合わせる。
一つだけ新しい仕事に手を出してみる。
一つだけ学び直してみる。
そして、反応を見る。
会社はどう反応するのか。
上司はどう評価するのか。
自分の負荷は増えすぎないか。
生活とのバランスは崩れないか。
自分の気持ちは少し戻るのか。
戻すときも、構造を見る。
また抱えすぎていないか。
また説明不足のまま動いていないか。
また評価に直結しない作業に時間を使いすぎていないか。
また会社への期待が大きくなりすぎていないか。
モチベーションが戻り始めたら、会社のリソースを再び使う。
経験を積む。
信用を広げる。
職務範囲を広げる。
上司や他部署との関係を作る。
将来の選択肢につながる仕事を取りに行く。
ただし、前と同じように自分を燃やし尽くさない。
小さく試し、反応を見て、少しずつ戻す。
モチベーションは、無理に上げなくてよい
仕事のモチベーションが下がると、すぐに上げなければいけないと思いがちである。
しかし、いつも高いモチベーションで働く必要はない。
会社員として長く働くなら、波があるのは当然だ。
評価に納得できない時期もある。
異動や配置で気持ちが切れる時期もある。
上司や会社への期待が下がる時期もある。
生活の事情で仕事に全力を出せない時期もある。
そのたびに、自分を責めていたら続かない。
モチベーションは、無理に上げなくてよい。
まず、下げ止める。
契約上の義務は果たす。
自分の責任範囲を確認する。
打開できるものとできないものを分ける。
追加の自己犠牲を止める。
回復の場所を会社外にも置く。
環境変化を待つ。
少し戻せるときに、小さく戻す。
これでよい時期もある。
やる気が出ないことを、すぐ怠けにしない。
気合いで乗り切ろうとしない。
モチベーション低下は、人格の問題ではない。
期待、評価、負荷、説明不足、生活、健康、家族とのズレとして整理できる。
そのうえで、今の自分に必要な運転モードを選ぶ。
全力で走る時期もある。
最低エネルギーで守る時期もある。
どちらも、会社員として働き続けるための現実的な選択である。
まとめ:火をつけ直す前に、消えきらないようにする
仕事でやる気が出ないとき、最初に必要なのは気合いではない。
自分を責めることでもない。
何がズレているのかを整理することである。
評価・目標のズレ。
負荷・責任の過多。
人間関係・説明不足。
生活・健康・家族。
これらは一つだけとは限らない。複合していることの方が多い。
原因が見えてきたら、打開できるものと、打開しにくいものを分ける。
目標の再定義、業務範囲の線引き、上司との期待調整、相談、情報整理は、自分の動き方で変えられる余地がある。
一方で、組織文化、経営判断、制度設計、上司の価値観は、簡単には変えられない。
打開できない間は、最低エネルギー運転に切り替える。
契約上の義務は果たす。
追加の自己犠牲はしない。
回復を会社外にも置く。
環境変化を待つ。
自分を壊さない。
そして、状況が少し良くなったら、小さく戻す。
いきなり全力に戻さない。
小さく試す。
反応を見る。
会社のリソースを再び使う。
モチベーションは、無理に上げなくてよい。
下げ止める方が現実的なこともある。
仕事を続けるには、燃え続ける力だけでは足りない。
火が弱くなったときに、消えきらないように守る力も必要である。


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